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リークの宝物、ふたたび

公開日 · 2026年9月15日

― 刺繍の街が生んだ、全長70メートルの大作 ―

皆さまは、イングランドのスタッフォードシャーにあるリークという街が、ヴィクトリア時代に「刺繍の街」として知られていたことをご存じでしょうか?

現在のリークは、古い建物が並び、個人経営のカフェやアンティークショップが点在する、可愛らしいマーケットタウンです。

けれどもヴィクトリア時代、この小さな街では、世界的にも注目される素晴らしい刺繍作品が生み出されていました。

それが、先日から大英博物館で展示が始まったバイユー・タペストリーの実物大レプリカです。

バイユー・タペストリーは、1066年のノルマン・コンクエスト、つまりノルマンディー公ウィリアムによるイングランド征服の物語を描いた、全長約70メートルにも及ぶ作品です。

名称は「タペストリー」ですが、実際には布に毛糸で刺繍を施して作られています。

その壮大な作品の実物大レプリカを作ろうと立ち上がったのが、リークのElizabeth Wardleと、Leek Embroidery Societyの女性たちでした。

制作が始まったのは1885年。

女性たちは力を合わせ、わずか約1年で、全長約70メートルにもなる大作を完成させました。

そして1886年、完成したレプリカは、リークのNicholson Instituteで初めて一般公開されたのです。

リークの女性たちが作り上げたこの作品は、その後、イギリス各地を巡回。

さらにドイツやアメリカへも渡り、多くの人々にバイユー・タペストリーと1066年の物語を伝えました。

小さなリークの街で生まれた刺繍作品が、世界を旅していたのです。

なんと素晴らしいことでしょう。

ところで、このリークの宝物ともいえる実物大レプリカは、現在どこにあるのでしょうか?

もちろん、リークのNicholson Instituteに大切に保管されているのよね?

……と思ってうかがったところ、

「レディングに展示されています」

とのこと。

は?

なぜ、リークの女性たちが作ったものが、レディングに?

さらに調べてみると、どうやら1895年に

「売っちゃった」

らしいのです。

ごめんなさい。

思わず吹き出してしまいました。

1895年、このレプリカがレディングのTown Hallで展示された際、元レディング市長のArthur Hill氏が、作品を購入したいと申し出ました。

Leek Embroidery Societyは、その申し出を受け入れます。

Arthur Hill氏は購入したレプリカを自分のものにはせず、レディングの街へ寄贈しました。

こうして、リークの女性たちが心を込めて作り上げた大作は、レディングの所蔵品となったのです。

現在も、Reading Museumで大切に保存・展示されています。

もちろん、適切な環境で保存され、今でも多くの方々に見ていただけるのですから、それは大変ありがたいことです。

Arthur Hill氏が公共のために寄贈してくださったからこそ、作品が後世に受け継がれてきたともいえます。

それでも、リークの街を愛する者としては、

「そんな素晴らしいものを、売っちゃったの……?」

と、少々複雑な気持ちにならずにはいられません。

何とのどかな街。

憎めない。

でも、なんだかちょっと心配。笑

そんなリークで、2027年1月から4月にかけて、リークとバイユー・タペストリーとの深い関わりを紹介する特別展が開催されます。

会場は、このレプリカが1886年に初めて公開されたNicholson Instituteです。

British Museumから提供される音声や映像のほか、Leek Embroidery Societyが制作したレプリカにまつわる歴史的資料などが紹介される予定なのだそうです。

リークの女性たちが約140年前に成し遂げた素晴らしい仕事と、その背景にある物語が、再び故郷の街で光を浴びるのです。

実はわたくし、この特別展のお話を初めて耳にしたとき、

「ついに、実物大レプリカがリークへ里帰りするのね!」

と、大喜びしてしまいました。

けれど、よくよく調べてみましたら、実物大レプリカそのものが戻ってくるわけではなく、関連資料などを紹介する特別展示とのことでした。

なーんだ。

やっぱり、一度売っちゃったものは帰ってこないのね。笑

とはいえ、普段はレディングにあるこの大作と、リークとの深いつながりを地元で知ることのできる、貴重な機会です。

このブログの「リークの宝物、ふたたび」

というタイトルには、タペストリーそのものの里帰りではなく、その作品を生み出した女性たちの物語と功績が、再びリークで光を浴びるという思いを込めました。

特別展が始まりましたら、もちろんわたくしも足を運んでまいります。

そして、リークが誇る刺繍の歴史と、素晴らしい女性たちの物語を、皆さまにもたっぷりとご紹介いたしますね。

ぜひ、楽しみになさっていてください。

リークの宝物、ふたたび